しも にもわかる薬学用語  

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◆1
薬剤師は信頼されているのか
・・・第5位(2002年度)
◆2
後発医薬品の推進

選抜医薬品と後発医薬品
後発医薬品使用のメリットとデメリット
後発医薬品使用にインセンティブを付加
備蓄問題、医師の処方権、患者さんの選択権
真に患者さんの利益となる医薬品の選択を
◆3
薬剤師職能・資質の向上

認定薬剤師制度
医薬分業
基準薬局
ゲット・ジ・アンサーズ運動
実践7箇条
MR
◆4
副作用・イベント報告

有害事象・副作用・予測できない副作用
医薬品等安全性情報報告制度
PEM
DEM


◆5
医薬品の開発と治験、市販後調査

治験
いろいろな G○○P
GMP・GLP
新GCPができた経緯
GCPの概要
CRO
IRB

治療コーディネーター
インフォームド・コンセント
臨床試験の3つのステップ
PMS
市販後調査
市販直後調査
「GMP」と「バリデーション」
ICH 
非臨床試験
◆6
医薬品の評価法・検定法

クロスオーバー法
オープントライアルと二重盲検試験
群間比較法
無作為抽出と非確率(便宜)抽出
「標準偏差」と「標準誤差」
「第1種の過誤」と「第2種の過誤」
危険率
「対応のある2群」と「対応のない2群」
「パラメトリック検定法」と「ノンパラメトリック検定法」
メタアナライシス
患者対照研究
コホート研究
EBM

◆7
医薬品情報

略号
医薬品情報の種類
厚生労働省からの医薬品資料
製薬企業からの医薬品資料
その他の機関からの医薬品資料
ゲノム

◆8
在宅・介護

介護保険制度 
薬剤師と在宅介護
薬剤師の在宅業務
ケアマネージャー
◆9
薬に関連する用語 

スイッチOTC薬
生活改善薬
薬と食品の相互作用
セイヨウオトギリソウ
ドーピング
悪性症候群

◆10医薬品管理・流通
医薬品卸業の情報戦略
主な薬品管理業務
購入管理
在庫管理
供給管理
品質管理


1.薬剤師は信頼されているのか・・・第5位(2002年度)

  米国では、1977年以来ギャロップ社が毎年職業人の信頼度を調査している。この調査の対象は、薬剤師、医師、看護師、聖職者、歯科医師、エンジニア、消防士等の職業人である。この調査によると、薬剤師がこの20年間に9回トップの座を占めている。
その理由は医療に関する薬剤師の知識が広範にわたり、患者相談に際してこの知識を積極的に提供しているからとされている。米国では昨年の2位が今回は5位となった。

一方、日本でも3年前から、似たような調査が日本リテイル研究所により行われている。薬剤師は昨年4位(45職種中)であったが、が2002年度は5位(48職種中)となった。今年から、消防士が調査項目に加えられ、ニューヨークの同時多発テロ事件での活躍などの印象もあってか、消防士はいきなりトップに躍り出た。

薬剤師の5位をどう評価するべきかは難しいところであるが、調査対象48職種中の5位は健闘しているといってよいのではないだろうか。
医薬分業が進展し、薬剤師の業務が目に見えやすくなったこと。ドラッグストアーの進出やテレビ等の宣伝により薬剤師がより身近になったこと。病院薬剤師の病棟活動が患者に理解されつつあることなどがあげられるかもしれない。

2後発医薬品の推進

■選抜医薬品と後発医薬品

 現在、医療機関等で保険診療に用いられる医療用医薬品は、約1万種類程度ある。 このうち、新しい効能や効果を有し、臨床試験(いわゆる治験)等により、その有効性や安全性が確認され、承認された医薬品を「先発医薬品」という。一方、先発医薬品の特許が切れた後に、先発医薬品と成分や規格等が同一であるとして、臨床試験などを省略して承認される医薬品を「後発医薬品」(いわゆるジェネリック医薬品)と呼んでいる。

■後発医薬品使用のメリットとデメリット

一般的に、先発医薬品に比べ、後発医薬品は薬価が安いため、後発医薬品を使用した方が、患者負担も医療費も低く抑えられるというメリットがある。一方、先発品で治療していたものを後発品に変更して、同じように薬効を期待できるかどうか心配されている。このため、厚生労働省医薬局審査管理課は、医療用医薬品の品質再評価として製剤の溶出性等に係る品質情報を記載した「医療用医薬品品質情報集」いわゆる「オレンジブック」にこれらの情報ほ逐次掲載している。しかし、後発品メーカーでは情報室に問い合わせしても先発品メーカーのようにしっかりした情報を有していないなどの問題点もある。

■後発医薬品使用にインセンティブを付加

2002年4月の診療報酬改定で、医療関連制度としては初めて「後発医薬品」の使用を推進するように誘導した点数がもうけらけれた。医薬分業下で、処方した時、一般名で処方した場合か、後発品を処方した場合に2点が処方せん料に加算される。処方せんを受け取った保険薬局でも後発品加算を2点、医薬品品質情報提供量として後発医薬品の情報提供すれば10点が加算される事になった。 

■備蓄問題、医師の処方権、患者さんの選択権

保険薬局側では、同一成分でも先発品と後発品の別の商品を備蓄せねばならない。また、後発品は同一成分、同一規格の製品が何種類もあるので、後発医薬品を商品名で処方されると医薬品の確保が困難という状況である。
であれば、医師が一般名で処方し、薬剤師が患者さんに比較情報を定時した上で、患者さんが選択することが、患者さん、薬局側としては喜ばしい形となろう。しかし、医師の立場からは、医師自身が医薬品のメーカーを決定することが「医師の処方権」との主張もあり、現在は後発品の商品を指定しての処方が多く、いわゆる「門前薬局」でしか対応できないような状況に陥っている。

■真に患者さんの利益となる医薬品の選択を
このような経緯で、薬剤師は、後発品についての説明を迫られる機会が増えている。一般名処方の処方せんを応需した場合はもちろん、病院薬剤師においても、後発品の選定や、報酬算定の基準について医師、あるいは医事課から意見を求められる機会も少なくない。
先発医薬品と後発医薬品をめぐる状況は流動的だが、今後、真に国民の利益となる医薬品の選択がなされることが望まれる。

3薬剤師職能・資質の向上

■認定薬剤師制度

日本薬剤師研修センターはは、平成14年6月末の認定薬剤師数を発表した。14年度新たに認定を取得したのは504名で、昨年度までの認定薬剤師数と合わせると10545名に達し、全薬剤師数に対する割合は7.4%となった。

薬剤師は、医療の担い手の一員であり、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上および増進に寄与すべき責任を負っている。それゆえ薬剤師は国民の期待に応え、その責任を全うするために、不断に研鑚に努めなければならない。
研修認定薬剤師制度は、薬剤師の自己研鑚に関する知識を啓発し、高揚させ、すべての薬剤師が研修に参加できる環境の整備を図るため、財団法人日本薬剤師研修センターにより生涯教育を支援することを目的として実施されている。

認定薬剤師は、倫理、基礎薬学、医療薬学、衛生薬学および薬事関連法規・制度およびそれらに係る実習、その他薬剤師業務を遂行するために必要なものを研修内容とし、必要単位を修得・申請すると認定される。
認定後も一定以上の単位を修得しなければならない。認定薬剤師の名簿はWeb上にても公開されている。
http://www.jpec.or.jp/contents/c03/topnintei.html

■医薬分業

 医師が診察・診断を行って患者の治療方針を決定し、薬剤師が医師の発行した処方せんに基づき調剤するというシステム。調剤に当たって、薬剤師は薬歴を利用し、処方された薬が他の病院の薬や大衆薬と重複していないか、飲み合わせが悪くないかなどを確認する。もし問題があれば、処方医に疑義照会し確認したうえで調剤する。このように、医療機関だけでなく薬局においても、薬のチェックが行われる仕組みになっている。また、医薬分業は「処方」という患者の医療内容を開示する仕組みともいえる。処方せん発行元が調剤もすると、薬価差を目当てに高額な薬を必要以上に処方する場合もみられる。医薬分業は、海外では多くの国で行われている。

 

■基準薬局

(社)日本薬剤師会が基準要件を定め、都道府県薬剤師会が認定する制度。基準要件として、責任をもって処方せんを調剤することや患者の薬歴カードを作成することなど、薬局業務を積極的に行っている質の高い薬局を認定し、厚生省が提唱する「かかりつけ薬局」の選定のめやすにすることを目的としている。

ゲット・ジ・アンサーズ運動

自分が投与された薬を知ってもらうために、1980年代初めにアメリカで始まった市民運動。患者自身が治療に必要な情報を入手することにより、より積極的に医療に参加して治療を進めようとする考えに基づく。薬についてもっと医師や薬剤師に質問して、答えをもらおう!」という運動である。日本でも、1996年から日本薬剤師会が中心となって運動を展開している。
質問内容は以下の
5つである。「Q1・この薬の名前は?」「Q2・何に効くの?」「Q3・注意することは?」「Q4・副作用は?」「Q5・他の薬や食物との飲み合わせは?」。

■実践7箇条

医薬分業が進展し、国民医療費における調剤報酬総額の比率が高まるにつれ、医薬分業に対する批判的な声も聞かれるようになった。
このため、日本薬剤師会は、医薬分業の目的の一つである処方せんのチェック機能を明らかにするものとして、「疑義照会状況調査」を実施し公表した。また、薬局、薬剤師の質的向上対策としての具体的行動目標として以下のような7項目を会員に示し、その実践を要請している。7項目は、薬局の基盤強化、薬剤師の資質向上、医薬品安全対策への参加、薬剤師の育成の4本柱に絞っている。 

1)基準薬局であること
2)基準薬局の回転式看板を掲示すること
3)医薬品等安全性情報報告制度に協力すること
4)薬学生実習受入薬局であること
5)PEM(Prescription Event Monitoring)参加薬局であること
6)研修認定薬剤師がいること
7)医薬品服薬指導情報集(厚生省監修・薬剤師研修センター発行)を備えていること

■MR

MR(医薬情報担当者)の定義:
「企業を代表し、医療用医薬品の適正な使用と普及を目的として、医薬関係者に面接の上、医薬品の品質・有効性・安全性などに関する情報の提供・収集・伝達を主な業務として行う者」(医薬情報担当者教育センターの教育研究研修要綱による)



4.「副作用・イベント報告」

■有害事象・副作用・予測できない副作用

有害事象(Adverse Event (or Experience)) 
医薬品が投与された患者または被験者に生じたあらゆる好ましくない医療上のできごと。必ずしも当該医薬品の投与との因果関係が明らかなもののみを示すものではない。 つまり有害事象とは、医薬品が投与された際に起こる、あらゆる好ましくない、あるいは意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)、症状、または病気のことであり、当該医薬品との因果関係の有無は問わない。 

副作用(Adverse Drug Reaction) 
病気の予防、診断もしくは治療、または生理機能を変える目的で投与された(投与量にかかわらない)医薬品に対する反応のうち、有害で意図しないもの。 医薬品に対する反応とは、有害事象のうち当該医薬品との因果関係が否定できないものを言う。

予測できない副作用 (Unexpected Adverse Drug Reaction) 
副作用のうち、治験担当医師用治験薬概要(Investigator's Brochure 以下、治験薬概要)に記載されていないもの、あるいは記載されていてもその性質や重症度が記載内容と一致しないもの。 

医薬品等安全性情報報告制度


わが国では、1967年3月に医薬品副作用モニター制度が発足したが、報告者がモニター施設に限られていたため、副作用報告件数が少なかった。そこで1997年7月より開始されたのが「医薬品等安全性情報報告制度」である。モニター施設等を指定するのではなく、医師、歯科医師、薬剤師の医療関係者全体を報告者としている。この報告制度は、薬による副作用の可能性があるものについて、日本薬剤師会雑誌等にとじ込まれている医薬品安全性情報報告書に記載し、郵送あるいはファックスで厚生省医薬安全局安全対策課に自発的に報告するもの。医薬品だけでなく、医療用具も対象となる。

厚生労働省の「医薬品等安全性関連情報」http://www1.mhlw.go.jp/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j.htmlでは、最近の「緊急安全性情報」と「医薬品・医療用具等安全性情報」を参照できる。 


■PEM

PEMはPrescription Event Monitoringの略で、処方・イベントモニタリング、通称「ペム」と呼ばれている。

「医薬品等安全性情報報告制度」のような自発報告制度は、副作用情報収集上大きな問題点がある。それは、医師、歯科医師、薬剤師などの医療関係者が、「もしかしたらこの患者の訴えや症状、臨床検査データ等は使用中の薬によるものかも知れない」というように、薬との因果関係について疑問を持たない限り副作用を発見できないことである。
副作用の発見には、感性豊かに患者の訴えに対して耳を傾け、「気のせい」で済ませてしまわない医療人としての姿勢が大切である。しかし、副作用情報の収集を感性に頼るだけでは問題点は解決できない。そこで、英国で開始されたのがPEM・処方イベントモニタリングである。PEMは、報告する内容を副作用あるいは副作用と思われるものに限定せず、薬の使用後に起きたさまざまなイベント(事象、出来事)、例えば患者の訴え、合併した疾患、臨床検査データなどの情報を収集し、これら集められたイベントを分析、評価することで新たな副作用を発見しようとするものである。
 わが国でのPEMは、東京大学医学部薬剤疫学講座を中心に、まず最初に血糖降下剤のトログリタゾンをテストドラッグとしてパイロットスタディが行われた。この薬を新たに使用されるようになった患者のイベントを収集し、同時にトログリタゾン以外の経口血糖降下剤を使用するようになった患者のイベントも収集して比較解析した。比較検討することで、糖尿病によって引き起こされるイベントなど、さまざまなバイヤス情報を取り除き、トログリタゾンの問題点を浮き彫りにするものであった。
現在はロサルタン(Angiotensin U Recepter Antagonist,降圧剤)をテストドラッグとしてPEMが進められている。

■DEM
DEMは、Dispensing または Drug Event Monitoring の略で、調剤あるいは薬のイベントモニタリング、通称「デム」と呼ばれている。
 
DEMは、日本薬剤師会独自のイベントモニタリングとして計画されているもので、調剤して患者に渡した薬、あるいは販売した大衆薬について、それらの薬を使用した患者に起こった副作用を発見するために行うものである。しかし、会員に参加を呼びかけたPEMやDEMなどのモニタリング事業に手を挙げた薬局はまだ少ない。


5.「医薬品の開発と治験、市販後調査」

動物実験の段階ではGLP(医薬品の安全性試験の実施に関する基準)、臨床試験ではGCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)、製造段階ではGMP(医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)、市販後はGPMSP(医薬品市販後調査実施基準)など医薬品開発の各段階で安全確保のための対策がとられている。

■治験

 「臨床試験」の一部として医薬品に関する試験があり、それには医師が自主的に行うもののほかに、製薬企業等からの依頼を受けて行うものがある。製薬企業等から依頼される臨床試験には「治験」と「市販後臨床試験」とがある。
臨床における有用性を評価するために行われる試験のことを臨床試験とよぶ。すなわち、薬が世の中に出る前に、薬についてヒトにおける有効性と安全性を確かめることを特に、「治験」と呼ぶ。なによりも倫理的な面、すなわち被検者の安全や人権が優先される。国際的には、1964年のヘルシンキ宣言でうたわれている。またわが国では1991年よりGCP(Good Clinical Practice
 医薬品の臨床試験の実施に関する基準)が施行されている。治験は第一相、第二相、第三相の三相に分けられており、実施すべき内容について、新薬臨床ガイドラインが出されている。
 
■いろいろな G○○P
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GMP Good Manufacturing Practice
薬局等構造設備規則、医薬品の製造管理及び品質管理規則
GLP Good Laboratory Practice
医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準
GCP Good Clinical Practice
医薬品の臨床試験の実施の基準
GPMSP Good Post-Marketing Surveillance Practice
新医薬品の市販後調査の基準
------------------------------------------------------------
■GMP ( god manufacturing practice:薬局等構造設備規則、医薬品および医薬部外品の製造管理及び品質管理規則)
(GMPは、製造業者の許可用件である。製造管理、品質管理の方法に不備があれば、業務停止措置がとられることになる。GMPに則った医薬品の製造を行わなければならない。) 

■GLP ( good laboratory practice :医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準)
(GLPは、新医薬品の承認申請等のために行われる有効性・安全性に関する非臨床試験(実験動物を用いた試験)データの信頼性を高めるための試験実施上の基準。非臨床試験の実施にあたって遵守すべきハード、ソフト面での基準を定めたものである。一般毒性試験のほか、生殖・発生試験・がん原性試験・依存性試験などの特殊毒性試験も対象となっている。

■新GCPができた経緯
 わが国の臨床試験(治験)は従来、汚職事件、データのねつ造、製薬会社から医師への不透明な金の流れなど、とにかくマイナスイメージがつきまとい、信頼性が疑問視されていた。
これらや薬害エイズなどの反省のもとに、1997年4月1日より実施基準が大幅に改められた。しかし、その激しい基準により、最近の治験件数は大幅に減少している。従来の治験がいかにいいかげんであったかということの裏返しでもある。このようなことから治験の空洞化がさけばれ、新薬の導入が諸外国より遅れることが懸念されている。最近では、治験の被験者募集の広告や被験者の金銭報酬などの規制が緩和されたり、治験の外部委託機関が発達し、大規模試験も始まるようになって明るい話題も多い。

■GCPの概要
・インフォームド・コンセントでは、被験者(患者を含む)にわかりやすく説明し、かつ文書で同意を得なければならない。
・被験者は治験への同意後、これをいつでも、理由の如何にかかわらず撤回できる。その場合なんらの不利益を被らない。これも被験者に予め知らせておく。
・一部の医師に権限が集中しないよう、「治験統括医師」は廃止されている。
・治験審査委員会(IRB)の構成委員は5名以上で、自然科学系以外の分野の人や、医療機関と関係ない人の参加が義務付けられている。
・治験が適切に実施されているかを製薬企業がチェックする、モニタリング制度がある。

CRO
 CRO はContract Research Organization(医薬品開発受託機関)の略。CROは臨床試験の第II相、第III相と市販後調査(第IV相)のデタマネージメント、統計解析、PMS報告書作成等の処理を受託する機関。

■IRB
RBはInstitutional Review Board (治験審査委員会) の略。

治療コーディネーター(CRC)Clinical Research Coordinator

CRCという仕事は、現在のところは特別な資格を必要としない。医療機関の体制によってその職性が規定されるべきものである。薬剤師、看護婦、臨床検査技師などが該当する。

CRCの役割は以下のものがあげられる。
 1、治験薬投与の確認
 2、投薬日時の確認
 3、検査の内容と日時の確認
 4、副作用、有害事象の把握
 5、ケースカード作成の補助
 6、インフォームド・コンセントの取得
 7、治験進行の円滑化

■インフォームド・コンセント

 インフォームド・コンセント(Informed Consent)とは、患者への検査、治療などの医療行為および第I相試験(Phase I)から第III相試験(Phase III)を対象として、臨床現場における患者への十分な説明をした上での患者の承諾のこと。治験においては文書で行うことが義務付けられている。
 小児の場合
1983年のベニスでの世界医師大会で「未成年者からもインフォームド・コンセントを得ることが必要である。」と採択されている。小児を対象にした治験において本人に同意能力がある場合には、法定代理人(親など)の同意に加えて本人の同意も必要である。分かりやすい言葉や文書で説明する。

■臨床試験の3つのステップ
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第I相試験
 通常、少数の健全な青年・壮年男子を対象にする。代謝や耐薬性などを調べる。
第II相試験
 医薬品の目的とする患者を対象に小人数で行う。効果の範囲、投与量などを調べる。
第III相試験
 一定規模の患者を対象とする。適応疾患や、適切な用量を決定する最終段階の試験のため、大変重要な試験でよく管理された臨床試験の実施が必要となる。
--------------------------------------------------------------------------

■PMS
臨床試験は、症例数、投与日数が少ないので、副作用の発現頻度も正確さに欠ける。また、患者群も医師も限定されており、プロトコールの範囲内での使用に限定されている。多剤併用による相互作用も未知数である。このため、市販後調査(PMS:Post Marketing Surveillance)は重要である。GPMPSにその基準が定められている。

■市販後調査

市販後調査には市販後臨床試験のほかに特別調査使用成績調査がある。これらは一定の計画のもとに、日常診療における医薬品の使用実態下での安全性、有効性及び品質に関する情報を収集する調査である。さらに副作用等の情報収集を目的とする調査として、市販直後調査医療機関からの自発報告の調査がある。各調査の結果は、医薬品の適正使用に必要な措置を講ずるのに用いられ、また再審査申請等資料とされる。

■使用成績調査
日常の診療における医薬品の使用実態下においてさまざまな患者に対する有効性、安全性等に関する情報その他の適正使用情報の把握のために行う調査のこと。 

■特別調査
特別な背景を有する患者(小児、高齢者、妊産婦、腎障害・肝障害を有する患者)に対する調査や長期使用に関する調査等のこと。 

■市販後臨床試験
治験や市販後調査で得られた情報を確認するためや、日常の診療下では得られない医薬品の適正使用情報を収集するために、行う試験のこと。 

■再審査および安全性定期報告
新薬は、製造承認後の一定期間(再審査期間:通常6年間)、試用成績などに関する調査、試験が義務づけられている。また、再審査期間中は安全性定期報告といい、半年あるいは1年ごとに調査の結果を集計・解析したもののほか、国内外の安全性情報を含めて行政当局に報告し、その再調査結果をもとに有効性・安全性について再確認されている。 

■再評価制度
原則として再審査期間を終了した医薬品について、現時点の医学・薬学の学問的水準から5年ごとに有効性・安全性・品質を見直す制度のこと。 

■副作用・感染症報告制度
医薬品に対する患者さん自身の反応にも大きな個人差がある。このため適正な品質の医薬品を、事前に知り得た情報の範囲で適切に投与しても、予期しなかった副作用が発現することがある。市販後の副作用・感染症の発生を早い段階で把握し、副作用・感染症の発生拡大を防止するため、医薬品の副作用を継続的に収集し、行政当局へ報告する制度のこと。
これらの情報は厚生労働大臣が医学・薬学などの専門家で構成する薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて判断し評価されたうえ、その医薬品が適正に使用されるために「使用上の注意」の改訂などの形で医療機関に情報提供される。

■市販直後調査

GPMSPの一部改正により、平成13年10月より、市販直後調査の導入が開始された。「市販直後調査」は、新医薬品の販売開始直後に重篤な副作用が発生した場合に、その症例を可能な限り網羅的に把握することにより安全対策を迅速に実施することを目的とする。調査期間は販売開始後6カ月間。製薬企業は医薬品を使用する医療機関に対して、納入前に医薬情報担当者(MR)による説明、協力依頼を行う。また、納入開始後2カ月間は概ね2週間以内に1回、その後は1カ月以内に1回、調査・確認を継続する。

■「GMP」と「バリデーション」

国際的ハーモナイゼーションのもと、改正GMPにより許可要件となった「バリデーション」。欧米ではすでに10年以上前から、製品の品質を保証する重要な手段として一般化している。1994年4月に施行となった改正GMPでは、従来の構造設備の規制に加えて、製造ならびに品質管理のソフト面に対し、科学的な手法が求められている。 バリデーションの主要な目的はあらかじめ設定した規格と、品質特性に適合した製品を安定して供給すること、つまり、品質確保が目的である。
厚生省による定義では@製造設備や手順。A工程その他の製造・品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすることとなっている。 これは、国際的な協調気運の中から生まれた考え方で、我が国においても早期対応が必須となっている。 またバリデーションには多くの利点があり、不合格・再処理品の減少、クレーム減少、生産量の増加といった実質的なメリットをもたらす側面を併せ持っている。

ICH
International Conference on Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(薬事規制に関するハーモナイゼイションに関する国際会議)の略。

■非臨床試験

非臨床試験に含まれるのは薬効薬理試験、薬物動態試験、一般薬理試験、一般毒性試験、特殊毒性試験である。しかし、そのうち一般毒性試験と特殊毒性試験のみがGLPの対象となる。
◆薬効薬理試験は、臨床的に期待される薬理学的特性(主作用)と作用機序の解明を目的とする試験であり、健常動物や各種病態モデル動物が用いられる。
一般薬理試験は、薬効薬理作用以外の作用について、その種類と程度を全般的に把握するとともに、臨床適用時に発現する可能性がある副作用を予測し、さらにその対策を講ずる上での重要な情報を得る。
◆特殊毒性試験は、生殖・発生試験・がん原性試験・依存性試験などが対象となっている。

6.「医薬品の評価法・検定法」


■クロスオーバー法

交差試験または交互試験と呼ばれる。同一患者に異なった薬剤を時期をずらして投与し、反応を研究する試験。慢性の疾患で、傾向変動が見られず、薬剤の治療効果が可逆的な場合に適している。

■オープントライアルと二重盲検試験
 二乗盲検試験(遮へい)法とは、医療側、患者とも、治験薬かプラセボ(または標準薬)か知らされていない試験法であり、外見をまったく同じに区別つかないようにして投与される。このことで治験薬にたいする双方の「期待感」を取り除くことができる。区別がつくのは第三者であるコントローラーのみ。
デザインには群間比較法、クロスオーバー法がある。
 厚生省による「新医薬品の臨床評価に関する一般指針」では初期の臨床試験はオープントライアルで行うのがよいとされ、後期第II相試験の用法・用量決定からは、できるだけ二重盲検試験によって行うのが望ましいとされている。

■群間比較法
ある処置の効果を評価するため、処置を受けた集団と受けない集団を設け、比較観察を行い、処置の効果を検討する方法。通常、二重盲検比較試験はこの方法で行われる。


■無作為抽出と非確率(便宜)抽出
 無作為抽出とは母集団の中のどこの個体も等しい確率で選ばれるよう計画された標本抽出法。無作為化により比較可能な偏らない群を作ることが確率的に保証される。具体的には、乱数表やコンピューターの乱数機能を利用する。これに対して、無計画な抽出法は、非確率抽出または、便宜抽出と呼ばれ、偏りを生じることが多い。
 二重盲検法による無作為化(ランダマイズド)試験は、現在最も信頼性が高く、効率的な評価法といわれている。

■「標準偏差」と「標準誤差」
 標準偏差(SD: Standard Deviation)は個々の標本のばらつき。分布の広がりのめやすをあたえる。一方、標準誤差(SEM: Standard Error of Mean.単にSEと略す場合が多い)は標本の平均のばらつき。平均値の信頼区間をあたえる。

■「第1種の過誤」と「第2種の過誤」

 「差がある」という仮説(対立仮説)は、そのままでは証明できない。これを証明するためには「差がない」という仮説(帰無仮説)の矛盾を証明する必要がある。この際、本当は「差がない」のに「差がある」としてしまうことを「第1種の過誤」という。逆に、「差がある」のに「差がない」としてしまうことを「第2種の過誤」という。

■危険率
 「帰無仮説」が正しいのに、すなわち「差がない」のに誤って否定し、「差がある」としてしまう「第1種の過誤」を生じる確率を「危険率」という。1%や5%がよく用いられる。例えば、p<0.01(危険率1%未満で有為差あり)などのように用いる。

■「対応のある2群」と「対応のない2群」
 「対応のある2群」とは、例えば同じ被験者について薬剤服用前の血圧と服用後の血圧の差を比べる場合などである。このような関連した2群では1標本(対応のある)検定を行う。
 「対応のない2群」とは、例えば薬剤服用群と非服用群(両群の被験者は異なる)の血圧の差を比べる場合など。このような、独立した2群には2標本(対応のない)検定を行う。

■「パラメトリック検定法」と「ノンパラメトリック検定法」
○パラメトリック検定法・・・t検定、分散分析などがあげられる。母集団が正規分布であり、測定の尺度が間隔尺度(血圧、体重、温度、長さなど)でなければならない。
○ノンパラメトリック検定法・・・Wilcoxon検定、Mann-Whitney検定、Freidman検定などがあげられる。母集団の分布の制約がない。順序尺度(著効・有効・無効、1位、2位、3位など)でも、名義(分類)尺度(コードによる病因分類、男女など)でも、間隔尺度でも検定できる。
 ノンパラメトリック検定法の欠点として、本来パラメトリック検定法が妥当とされる場合に使うと、検定の効率が若干悪くなる(t検定で有為差がでていたものが、Wilcoxon検定を用いると出ないことがありうるとい意味)。

■メタアナライシス(Meta-analysis)
概説のひとつで、複数の研究結果のオッズ比を併合などをする量的手法。
メタアナリシスはさまざまな治療からの要約的統計量を統計的に結合する。

■患者対照研究(Case-Control Study) 
関心のある転帰を示す患者とそれと同じ転帰でない対照を明確にし、関心のある要因への曝露があるかをさかのぼって見直す研究デザイン。

■コホート研究(Cohort Study)

コホート研究とは、ある要因について暴露群(例えば一定量の納豆を食べる群)と非暴露群(一定量の納豆食べない群)に分け、追跡調査を行い、疾患等事象の発生状況(がんの発生率)を調べ比較する方法。大変な労力と時間がかかる。

EBM (Evidence Based Medicine)
臨床的な診断や治療はともすれば個人の経験や慣習に左右されることがよくある。また、単に動物実験より類推した論理や権威者の意見により考察されることもある。これらは、しばしば何の根拠もなく行われているために、患者さんに不利益をもたらす。また、医療費の高騰や社会資源の無駄となる。これを回避するためには、疫学などの研究成果や実証的、実用的な根拠を理解し、効果的で質の高い患者さん中心の医療を実践するべきである。
「根拠に基づいた医療」(EBM)は、経験に頼ってきた従来の医療を改善するため、大規模な臨床研究など科学的に裏付けされたデータを基にして、患者にとってもっとも有益で害の少ない治療法を選ぶことをいう。
●あやふやな経験や直感に頼らずに、科学的な証拠に基づいて最適な医療、治療を実践させるための方法論。

7.「医薬品情報」

JAPIC Japan Pharmaceutical Information Center (財)日本医薬情報センターのこと。
 IF Interview Form インタビューフォーム
医療用医薬品添付文書の情報を補足する。製薬会社のMRが医師や薬剤師に医薬品を説明する際の資料。医療側がMRにインタビューしながらさらに情報を付加して書き込む。
MR Medical Representative 医薬情報担当者
かつてプロパーと呼ばれた職種。以前は自社製品の宣伝活動が主な仕事であった。現在は、MRとなって生まれ変わった? 本来、医薬品の安全性に関する情報を収集し、評価、分析し、必要とされる対応を医療関係者に的確に伝えるべき、製薬会社の担当者。
FDA Food and Drug Administration 米国食品医薬品局のこと。
INN International Nonproprietary Names WHOが決めた国際的な医薬品一般名の略称のこと。
DSU Drug Safety Update

医薬品安全対策情報  副作用調査会で審議され、変更された内容を早急に伝えるために、日本製薬団体連合会が発行する速報誌である。

SBA Summary Basis of Approval  新医薬品承認審査概要
本書は、新医薬品の効能・効果、用法・用量等薬事法に定める承認事項や、承認の根拠となった基礎及び臨床試験などのデータの概要、これらに対する評価や取り扱い、使用上の注意とその設定根拠などについて、厚生省薬務局審査課がとりまとめたものを日本公定書協会が発刊したもの。
SBR Summary Basis of Re-examination 新医薬品再審査概要 
医薬品の適正使用の推進を図るため、中央薬事審議会の評価を踏まえ再審査申請資料の基となった使用成績調査、特別調査、市販後臨床試験及び副作用報告等の市販後調査の概要がまとめられたもの。これも厚生省薬務局審査課がとりまとめたもの。
     
     

■医薬品情報の種類
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0次情報---口頭発表による研究発表など。
1次情報---学術雑誌に掲載された論文など。(例:Lancet の原書論文)
2次情報---抄録誌、索引誌など。(例:MedLine、Chemical Abstracts)
3次情報---集大成された情報。教科書、辞書など。(例:メイラー 医薬品の副作用大事典)
(だんだん情報が整理されて情報が加工されることにより、速報性はなくなっていく。)
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■厚生労働省からの医薬品資料
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○日本薬局方 ○医薬品・医療用具等安全性情報(毎月発行)
○新医薬品承認審査概要(SBA) ○新医薬品再審査概要(SBR)  
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■製薬企業からの医薬品資料
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○医薬品添付文書 ○緊急安全性情報(厚生労働省の指示による) 
○ 医薬品インタビューフォーム
○医薬品製品情報概要(製品パンフレット)
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その他の機関からの医薬品資料
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○DSU (日本公定書協会および日本製薬団体連合会から発行)
○医療薬日本医薬品集(日本医薬情報センター(JAPIC)から発行)
○Physicians' Desk Reference(PDR: 米国の主要な医薬品企業)
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■ゲノム:
1個の生物を作るのに必要な最小の遺伝子セットのこと。遺伝子は染色体の中に存在し、その実態はDNAである。DNAは4種類の塩基配列から構成されており、この塩基配列の情報から特定のタンパク質が作られ、生物が構成される。この塩基配列の仕方は種や個体によって異なっており、これが個体の持つ遺伝子情報となる。  


8.「在宅・介護」

■介護保険制度
介護保険制度が平成12年4月からスタートした。
本格的に高齢化社会が進展する中、介護を必要とする高齢者も急激に増えていくことが予測されている。高齢期における最大の不安は、介護に対する問題だといる。この介護保険制度は、だれもが安心して健やかに暮らせる社会としていくため、介護という問題を相互扶助の考えにたち社会全体で支える仕組みをつくるもの。 

<保険者は、市町村> 
介護保険の運営は、国民健康保険と同じように、最も身近な市町村が行う。

<被保険者の範囲は40歳以上> 
 被保険者は、(1)65歳以上(第1号被保険者)と(2)40歳から64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)である。
 65歳以上の人が、入浴や排せつ、食事など日常生活において介護を必要とする場合などに、保険の給付の対象となる。なお、40歳から64歳までについては、脳卒中や初老期痴呆などの老化に伴って生ずる疾病が原因となって介護が必要になったときに保険給付の対象になる。 

<介護保険のサービス> 
 介護保険では、介護を必要とする人ができるだけ自立して生活ができるよう、在宅・施設の両面にわたって必要な保健医療サービスや福祉サービスが受けられる。 

<利用の手続> 
保険給付を受けようとする人やその家族は、介護を必要とするかどうか、また、その必要の程度(要介護度等)はどのくらいかを判定してもらうため、市町村に申請を行う必要がある。 
市町村に設置する介護認定審査会の審査判定に基づき、市町村長から要介護(要支援)と認定された場合、はじめて介護保険のサービスが利用できるようになる。
この場合、介護サービス計画(ケアプラン)に基づき、民間事業者などの介護サービス提供機関からサービスが提供されることになる。 このケアプランは、専門機関に依頼し、相談しながら作ることもできます。 なお、要介護認定の結果に不服がある場合には、県に設置される介護保険審査会に不服申立ができることになっている。 

<利用者負担は一割> 

 保険給付を受けた人は、基本的には介護サービス費の1割を負担する。
 ただし、1割負担が一定の基準額を上回った場合には、上回った額が後に償還される。 


■薬剤師と在宅介護

薬剤師は、様々なところで、在宅介護に関わっている。例えば、薬局での薬などの相談や介護用品の説明や販売などがある。
また、寝たきり患者さんの自宅や介護施設などを訪問して、調剤した薬を届けたり、薬の服用方法や管理方法をはじめ日常生活における注
意点などをアドバイスしながら、医師はもちろん介護に携わるスタッフと連携を取ってより良い医療の実現が出来るように心がける必要が
ある。また薬剤師の中には、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を持った人もたくさんいる。

■薬剤師の在宅業務の実際

薬剤師が在宅業務を行う際の1例を以下に示す。

1.医師より在宅管理の指示書と処方せんが届くと、それに基き薬歴をチェックしながら調剤致する。行く前に、在宅医療スタッフと処方せ
んのチェックや、注意する事を話し合う。慣れないうちは別の医療関係者に同行してもらう。

2.患者さん宅へ行き、薬を渡し、服薬指導をする。薬がきちんと服用されていないことも多いので、残薬のチェックは毎回行う。

3.薬局へ帰って来た後、薬歴の記録、医師への報告書、必要がある時は訪問看護師への連絡、在宅介護支援センター、ヘルパー等へ情報提供や連絡をする。

4.必要に応じて、1人の患者さんに対してそれに関連するスタッフが集まってミーティングを持つ。


■「ケアマネージャー(介護支援専門員)の仕事

2000年4月に開始された介護保険制度で大きな役割を果たす。
市区町村の委託を受け、要介護者に対し訪問調査をおこない、それによって要介護認定が下される。
介護サービスを受ける高齢者のためにのサービスメニュー作成・業者との連絡調整・保険申請代行・市区町村の委託を受けて要介護認定を
行うための訪問調査にもあたる。資格を取得した後  試験合格者は実務研修(3日間(16時間)×2回)を受講し、要介護認定、ケアマネジ
メントなどに関する演習・実習を行い、修了証の発行を受けると介護支援専門員となる。

実務経験通算5年以上、かつ従事日数900日以上で受験資格
@医師 A歯科医師 B薬剤師 C保健師 D助産師 E看護師、准看護師 F理学療法士 G作業療法士(特養の生活指導員を始め、法
令で施設に必要が義務付けられている相談援助業務に従事する人等) H社会福祉士 I介護福祉士 Jあん摩マッサージ指圧師・はり師
・きゅう師 K栄養士(管理栄養士を含む) L義肢装具士 M言語聴覚士 N歯科衛生士 O視能訓練士 P柔道整復師 Q精神保健福
祉士 R相談援助業務に従事する人 S介護などの業務の従事者(特養の保母など)・・・実務経験通算5年以上、かつ従事日数900日以上
。ただし、Sの場合の中で、社会福祉主事任用資格を持つ人や、ホームヘルパー養成研修2級過程に相当する研修を修了した人以外は10年、1800日以上。

9.薬に関連する用語

■スイッチOTC薬

 医療用医薬品から一般用医薬品(OTC)に転用(スイッチ)された薬。いままで、医師の処方せんがなければ使用できなかった医療用医薬品をOTC( 一般用医薬品)に転用したもの。その用途は、かぜ薬、胃腸薬、水虫薬など多岐にわたる。H2ブロッカーとよばれる一連の胃腸薬(成分として、シメチジン、ファモチジン)が承認された。もともと、医師の判断がなければ使用できなかった薬であるので、効力も強く、その使用は慎重にする必要があるといわれている。

■生活改善薬

 従来、薬は、病気や苦痛の治療として用いられるものである。しかし近年、生活の「質」を改善する、いわゆる「生活改善薬」薬が発売されるようになった。一時話題になった男性の性的不能改善薬・バイアグラ、発毛剤「リアップ」、女性用経口避妊薬の低用量ピル、禁煙補助剤のニコチン入り禁煙ガムなどがこれにあたる。医師の処方箋が必要なものもあるが、治療薬に比べて薬店などでの購入が比較的らくで、製薬企業各社は新たな収入源になるものと期待している。我が国では、超高齢化が進み、排尿困難治療薬、尿失禁治療薬なども生活改善薬の範疇に含まれるようになってきた。  

薬と食品の相互作用

食品や嗜好品と薬との間にも相互作用のあることがいろいろと知られている。例えば、納豆とワルファリン(抗凝血薬)では、ワルファリンの効果が強力に阻害され血栓を生じ易くなり、大変危険である。また、グレープフルーツ・ジュースと一部の高血圧薬の組み合わせなどは、高血圧薬の代謝を抑制して濃度を上昇させ、副作用が生じ易くなる。また、コーヒー、牛乳、炭酸飲料、チーズ、アルコール類、煙草なども、薬によっては作用に影響を及ぼすことがある。長期の喫煙習慣によって代謝酵素が増えることで薬が本来の薬効を発現しにくくなる。また、ある種の抗生物質は牛乳に含まれるカルシウムと結合することで、消化管からの吸収が低下する。  

■セイヨウオトギリソウ(相互作用)

<相互作用が問題>
英国では医療関係者並びに市民に対して健康食品のセント・ジョーンズ・ワート製品と医薬品との相互作用について注意喚起が行われた。セント・ジョーンズ・ワート製品に含まれる成分が薬の分解に関与する酵素の活性を高めるため、ある種の医薬品の血液中濃度が十分に上がらず、治療効果が減弱されるおそれがあるということである。日本でも通販等でセント・ジョーンズ・ワート製品が販売されているので、医薬品等安全性情報で注意喚起がなされ、関係する医薬品の添付文書が改定されている。

<抗うつ作用>
セント・ジョーンズ・ワート製品は、英国や米国では医薬品としては認められていないが、ドイツでは抗うつ剤として使われており、その作用機序は、最近日本でも最近承認されたSSRIと同様に脳のセロトニン作動性神経を活性化するといわれている。したがって、SSRIと併用した場合には、セロトニンによる作用が増強され、副作用が現れやすくなると指摘されている。

<注意すべき医薬品>
〇HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、サキナビル、リトナビル、ネルフィナビル)、HIV逆転写酵素阻害剤(エファビレンツ、ネビラピン)。医薬品の血中濃度レベルが低下し、HIV抑制作用が減弱される恐れがある。
〇ワルファリン、ジゴキシン、テオフィリン、シクロスポリン、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール)
 医薬品の分解が促進され、作用が弱まっている恐れがあるが、セント・ジョーンズ・ワートを急に中止すると分解促進作用がなくなるため、医薬品の血液中濃度が高くなりすぎる危険性がある。
〇経口避妊薬
 避妊効果が得られない恐れがある。
〇SSRI(マレイン酸フルボキサミン)
 副作用が現れやすくなる恐れがある。

■ドーピング

 スポーツ選手が、よい成績を得るために薬物を不正に用いることをいう。ドーピングで使用される薬物には、覚醒剤、鎮痛剤、たん白同化ステロイド剤、利尿薬、β遮断薬、精神安定剤等がある。薬物を使用する目的としては、体力・耐久力の増強、スピードの向上、痛覚の消失、不安の消失、疲労発現の遅延、体重の調節などがある。薬物の使用が発見されると処罰を受ける。ドーピングは薬物濫用の一種であり、精神的・肉体的に危険である。  

■悪性症候群(Syndrome Malin)
一般に抗精神病薬の投与中、または抗パーキンソン病薬の中止や投与量の変更に伴い認められる高熱、意識障害、筋強剛や振戦などの錐体外路症状及び発汗や頻脈などの自律神経症状を主徴とする症候群であり、早期に適切な治療が行われなければ重篤な転帰をとることもある副作用である。
 初期症状に気がついたら速やかに医療機関を受診するように指導する。

<悪性症候群に対する薬物療法>
薬物療法としては、ドパミン作動薬(メシル酸ブロモクリプチン)やダントロレンナトリウムが用いられている。ダントロレンナトリウムはわが国で平成6年に悪性症候群に対する適応が承認されている。

<厚生労働省からの再三の注意喚起>
医薬品副作用安全性情報で、No.99(平成元年11月号)「解説−向精神薬による悪性症候群」において、ハロペリドール等向抗精神薬と抗パーキンソン病薬について注意が喚起され、またNo.126(平成6年5月号)の「ドロキシドパと悪性症候群」においてドロキシドパについて注意が喚起され、併せて抗パーキンソン病薬全般についても注意が喚起された。また、No.132(平成7年7月)でも「抗パーキンソン病薬」について注意が喚起されている。

10.薬品管理・流通

■医薬品卸業の情報戦略
 医薬分業も50%時代を迎え、医薬品卸は急増する取引先である調剤薬局に対し新しい取り組みを行っている。例えばクラヤ三星堂は、ITを活用した新しいビジネスモデル「medks‐epi」をスタートさせた。福神は、都市型物流センターを活用し定時配送などを通じて調剤薬局を支援しようとしている。東邦薬品は、顧客に焦点を当てた新しい受発注システム「ENIF」に「分割販売」「情報」といった機能を組み合わせた会員組織「ENIFクラブ」を展開している。

■主な薬品管理業務
  ・発注検収管理
  ・適正在庫量の管理
  ・品質管理、使用期限の管理
  ・麻薬、向精神薬等の管理
  ・OTC、衛生材料等の在庫管理----保険薬局の場合
  ・治験薬、特殊薬品等の管理-----病院薬剤部の場合


■購入管理
必要な医薬品を、納入業者(医薬品卸業者)に発注する。医薬品の納品に際しては検収作業を行い、薬品名、規格・包装単位などの確認は当然のことながら、有効・使用期限がどの程度残っているのか、また製造番号(ロット番号)などもチェックして記録する。 ロット番号の逆転がないよう注意する(同一医薬品のロット番号が、前回の番号より小さくなった時は以前の製品より古い製品であることがわかる)。
[
発注}
注文することを「発注」という。1ヶ月分まとめて購入する場合と、足りない分をその都度発注する場合がある。最近はオンライン発注が行われることが多い。医薬品卸のMS(営業担当者)が薬局へ納品した際に、使用期限や、ロット番号などを確認し、適正な医薬品が納品されているか検査する行為を「検収」という。「入庫」した医薬品は医薬品倉庫に保管する。これはまだ、返品可能である。調剤室に「出庫」して、箱からあけてしまえばもはや返品はできない。

■在庫管理
 必要な時に必要な医薬品が、十分量在庫されていないと、保険薬局においては処方せんを持参して患者さんに大変迷惑をかけることになり、病院では、診療に大きな影響を与えることになる。最近では、多くの薬局、病院においてコンピューターを活用して在庫管理を行っている。しかし、コンピューターによる統計上の予測も利用しつつ、購入担当者の経験を加味して発注が行われる。
在庫を増やせば、欠品が少なくなるが、コストがかかるし、デッドストック(有効期限切れのために廃棄する医薬品)も増加する。在庫を減らせば、コストはかからないが、緊急時の対処が不可能であったり、欠品を生じ患者さんからの信用を失うことにもつながる。医薬品購入担当者は適正な在庫を確保することが求められる。

■供給管理---病院の場合 
 病棟や外来診療科などに、必要な医薬品を必要量払い出す。薬剤師が入院患者さんに使用される注射薬を、各患者さん毎のカートや袋などにセットして供給する。

■品質管理 
 医薬品は品質の確保は患者さんの安全に直接かかわるとともに、薬局への信頼にもかかわる。倉庫内における温度、光度、湿度などを適切に管理すると共に、先入れ先出し(先に購入した医薬品を先に使用する)を心掛ける。この際もロット番号の逆転がないよう注意する。


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