◆ 新薬情報 index

2018年9月製造販売承認

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■オラビ錠口腔用50mg■モビコール配合内用剤LD / HD■ベオーバ錠50mg■エイベリス点眼液0.002%
■ モビコール配合内用剤LD / HD
1. 承認概要
新医療用配合剤 2018年9月 / 2018年11月 発売
2. 薬効分類名
慢性便秘症治療薬
3. 一般的名称
成分名:マクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム
4. 適応症
慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
5. 類薬との比較

モビコール配合内用剤HDは、モビコール配合内用剤 LDの2倍量が1包に包装されている高用量製剤であり、2022年5月に発売されました。
6. 特徴
【特徴】
本剤は、慢性便秘症に対するわが国初のポリエチレングリコール(PEG)製剤で、併用薬などの使用制限もなく、小児や腎機能が低下した高齢者にも使いやすい薬剤として期待されています。

【慢性便秘症】
慢性便秘症は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」です。治療には生活習慣の改善や薬物療法などがあります。薬物療法のうち、強く推奨されているのは浸透圧性下剤と上皮機能変容薬です。一方、習慣性のある刺激性下剤などは、一段階低い推奨となっています。

【承認状況】
PEG製剤は、小児においては英国のNICEのガイドライン、成人においては世界消化器病学会のガイドラインなどで使用が推奨されています。海外では、2018年6月現在、欧州を中心に、成人及び12歳以上の小児に対しては37ヵ国、2~11歳の小児に対しては28ヵ国で小児用製剤が承認されています(販売名:MOVICOL)。

【作用機序】
本剤はPEGであるマクロゴール4000および電解質を配合しており、主に高分子量のPEG(マクロゴール4000)の浸透圧効果により、腸管内の水分量を増加させることで、便の軟化と便容積の増大を促し、用量依存的に便の排出を促進します。

【用法・用量】
本剤は、水で溶解して経口投与します。
通常、成人および12歳以上の小児には、初回用量として1回2包を1日1回経口投与します。症状に応じて1日1~3回まで適宜増減可能ですが、最大投与量は1日に6包(1回量として4包)までです。増量は2日以上空けて行い、増量幅は1日2包までです。
2歳以上7歳未満の幼児では、初回用量1回1包、7歳以上12歳未満の小児では、初回用量1回2包を1日1回経口投与します。症状に応じて1日1~3回まで適宜増減可能ですが、いずれも最大投与量は1日4包(1回量として2包)までです。増量は2日以上空けて行い、増量幅は1日1包までです。

【副作用】
承認時までの国内の臨床試験(成人、小児それぞれを対象とした第III相試験)では、192例中33例(17.2%)に副作用が認められています。主な副作用は、下痢7例(3.6%)、腹痛7例(3.6%)でした。
なお、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー(頻度不明)が現れることがあるため注意が必要です。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.腸閉塞、腸管穿孔、重症の炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、中毒性巨大結腸症等)が確認されている患者またはその疑いがある患者には、病態を悪化させるおそれがあるため禁忌です。

【患者さんへの指導例】
1.お薬によって腸管内の水分量を増やし、便を軟らかくして排便を促します。
2.モビコール配合内用剤LDは、1包当たりコップ3分の1程度(約60mL)の水に溶かして服用します。モビコール配合内用剤HDは、1包当たりコップ3分の2程度(約120mL)の水に溶かして服用します。飲みにくい場合は、ジュースなどに溶かしても構いません。
3.溶かした後すぐに服用しない場合や飲み切れなかった場合は、ラップをかけて冷蔵庫に保管し、当日中に飲み切るようにしてください。
4.腹痛、おなかの張り、腹部の不快感が現れた場合には、主治医か薬剤師までご連絡ください。
5.蕁麻疹、喉のかゆみ、息苦しさ、動悸、顔のむくみなどが現れた場合はすぐに受診してください。

【ここがポイント!】
本剤は、日本で初めて慢性便秘症に適応を持つPEG製剤です。塩化ナトリウムなどの電解質を含有しており、浸透圧性下剤に分類されます。海外では欧州を中心に、小児を含めた慢性便秘症治療薬として広く用いられており、ガイドラインでも使用が推奨されています。わが国では、日本小児栄養消化器肝臓学会から、小児慢性便秘症に対する開発要請が出され、2015年5月に開発が開始されました。
従来、浸透圧性下剤として酸化マグネシウムが汎用されていますが、高齢者などの腎機能低下患者では高マグネシウム血症に注意が必要であったり、ビスホスホネート製剤やニューキノロン系抗菌薬などとの相互作用が問題となったりすることがあります。さらに、酸化マグネシウムは胃酸分泌抑制時に効果が減弱するため、プロトンポンプ阻害薬などを服用している場合や胃切除後では効果が低下する可能性もあります。
本剤の主薬であるPEG(マクロゴール4000)には併用禁忌、併用注意の薬剤はありません。
本剤は2歳から使用でき、水に溶解して服用します。一方、本剤に含まれる塩化ナトリウムのためわずかに塩味がするため、小児では服用を嫌がる場合もあります。この場合は、ジュース、スポーツドリンク、お茶などの冷たい飲料で溶解することも可能です。温度の高い飲料に溶解してしまうと、炭酸水素Naが分解してしまうこと、マクロゴール4000の特異なにおいが出る可能性があるため、30~40℃までの温度の飲料で溶かすようにしてください。(2023.10加筆)

効果は用量依存的なので、患者さんの便秘の状態に応じて適切な服用量に調節することができます。とくに小児や、高マグネシウム血症が問題となる高齢患者でも安心して使える薬と考えられるでしょう。
効果は用量依存的なので、患者さんの便秘の状態に応じて適切な服用量に調節することができます。とくに小児や、高マグネシウム血症が問題となる高齢患者でも安心して使える薬と考えられるでしょう。
8. 製造販売元など
製造販売元:EAファーマ株式会社
販売元:持田製薬株式会社  プロモーション提携:エーザイ株式会社
お問合せ先:①持田製薬株式会社 くすり相談窓口 0120-189-522
      ②EAファーマ株式会社 くすり相談 0120-917-719

2023-10-02 モビコールHD、LDについて加筆、溶かし方の工夫を加筆
2024-03-12  溶解方法を修正

 
(文責 下平秀夫) 2019年3月/2024年3月更新