◆ 新薬情報 index

2019年6月製造販売承認

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■アジマイシン点眼液1%■ロズリートレクカプセル100mg,200…■ビレーズトリエアロスフィア56吸入■ロナセンテープ20mg,30mg,40m…■イナビル吸入懸濁用160mgセット■ゾルトファイ配合注フレックスタッチ
■ ビレーズトリエアロスフィア56吸入
1. 承認概要
新有効成分・新医療用配合剤 2019年6月 / 2019年9月 発売
2. 薬効分類名
COPD治療配合剤
3. 一般的名称
ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物製剤
4. 適応症
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)
5. 類薬との比較

★LABA、LAMA、ICSの3成分配合のCOPD治療薬としては2剤目
6. 特徴
【特徴】
本剤は、吸入薬を複数使用してもコントロールが不十分なCOPD患者に対し、治療効果とアドヒアランス双方の改善が期待されています。

【承認状況】
海外では、本剤が承認されている国または地域はありません。2019年1月時点で、米国および欧州において審査中です。

【作用機序】
ICS(ブデソニド)による抗炎症作用と、LAMA(グリコピロニウム臭化物)とLABA(ホルモテロールフマル酸塩水和物)による気管支拡張により、炎症によって狭窄した気管支を広げ、呼吸機能を緩和します。

【用法・用量】
通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320μg、グリコピロニウムとして14.4μg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6μg)を1日2回吸入投与します。

【副作用】
第III相試験(KRONOS試験、PT010007試験、PT010008試験)の併合成績において、本剤が投与された639例のうち、臨床検査値異常を含む副作用が126例(19.7%)において認められました。主な副作用は、発声障害(3.1%)、筋痙縮、口腔カンジダ症(各1.4%)、上気道感染(1.3%)などでした。
なお、重大な副作用として、心房細動(0.2%)、重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)が報告されています。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.閉塞隅角緑内障の患者さんには、抗コリン作用により、眼圧が上昇し症状を増悪させるおそれがあるため、禁忌です。
2.前立腺肥大等による排尿障害がある患者さんには、抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがあるため、禁忌です。

【患者さんへの指導例】
1.本剤は、気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善するCOPDの治療薬です。
2.1日2回、1回2吸入を、毎日なるべく同じ時間帯に、よく振ってから吸入してください。
3.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず数回うがいをしてください。
4.吸入器の小窓には、20きざみでおおよその残り回数が示されています。小窓の中央に「0」が表示され、それ以上進まなくなったら使用を中止して、新しいものに交換してください。開封するときは、キャップを外し、よく振って1度空噴霧する、という一連の操作を4回繰り返してください。
5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。
6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療とともに禁煙を徹底しましょう。
7.週1回、本体から薬剤の入った缶と吸入口のキャップを外してプラスチック部分(アクチュエーター)をぬるま湯で洗浄し、洗った後はよく乾かしてください。

【ここがポイント!】
本剤は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の3成分が配合されたCOPD治療薬です。3成分配合のCOPD治療薬として、フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ)に続く2剤目となります。テリルジーはドライパウダータイプですが、本剤はエアゾールタイプです。
COPDの15~20%は喘息が合併していると見込まれているため、LAMAやLABAなどの気管支拡張薬だけでは症状のコントロールが難しい患者さんが少なくありません。本剤は、ICS/LABAやLAMA/LABAで治療していても症状が残存している患者さん、経口ステロイド薬が必要となる患者さんなどで切り替えて使用することが想定されます。
本剤はLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用には注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。
本剤は、デバイスに世界で初めて「エアロスフィア」というpMDI(加圧噴霧式定量吸入器)が採用され、薬剤送達技術を駆使して調製された多孔性粒子が3種の薬剤を肺の末梢まで届けることが期待されています。pMDIなので、吸気力が低下している場合でも少ない負荷で吸入できますが、ボンベを押す力が弱い患者さんには吸入補助器具(プッシュサポーター)、ボンベを押すタイミングと吸入の同調が難しい患者さんにはスペーサー(エアロチャンバープラスなど)の使用を勧めましょう。
COPD患者さんは、喫煙や加齢に伴う併存疾患の治療を並行していることが多く、アドヒアランスを向上させて治療を継続させることが重要です。COPD治療に本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、患者さんの負担を増やさずに症状の改善およびアドヒアランスの向上を目指すことができるでしょう。
8. 製造販売元など
製造販売元:アストラゼネカ株式会社
お問合せ先:アストラゼネカ株式会社 メディカルインフォメーションセンター 0120-189-115
(文責 下平秀夫) 2019年12月