◆ 新薬情報 index

2022年3月製造販売承認

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■ミチーガ皮下注用60mgシリンジ■カログラ錠120mg■ジスバルカプセル40mg■ケレンディア錠10mg,20mg
■ カログラ錠120mg
1回8錠を1日3回、つまり1日24錠を服用
1. 承認概要
新有効成分 2022年3月 / 2022年5月 発売
2. 薬効分類名
潰瘍性大腸炎治療剤/α4インテグリン阻害剤
3. 一般的名称
カロテグラストメチル
4. 適応症
中等症の潰瘍性大腸炎(5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な場合に限る)
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、経口投与可能な潰瘍性大腸炎治療薬であり、新たな寛解導入療法の選択肢として期待されています。

【承認状況】
海外では承認されていません(2022年3月現在)。

【作用機序】
本剤は、生体内で活性代謝物であるカロテグラストとなり、リンパ球などの炎症性細胞の表面上に発現するα4インテグリンに結合します。これにより、α4β1 インテグリンと VCAM-1(血管細胞接着分子-1)との結合、およびα4β7 インテグリンとMAdCAM-1(粘膜アドレシン細胞接着分子-1)との結合を阻害することで、T 細胞を含む炎症性細胞の血管外遊走、腸管組織への集積を抑制し、抗炎症作用を発揮すると考えられます。

【用法・用量】
通常、成人にはカロテグラストメチルとして1回960mg(8錠)を1日3回、食後に経口投与します。8週間投与しても、臨床症状や内視鏡所見などによる改善効果が得られない場合は、本剤の継続の可否も含めて治療法を再考します。

【副作用】
第II相試験および第III相試験の併合解析において、臨床検査値異常を含む副作用は、本剤投与群259例中48例(18.5%)で報告されました。主な副作用は、上咽頭炎5例(1.9%)、白血球数増加(4例)、頭痛、血中乳酸脱水素酵素増加各3例(1.2%)、腹部不快感、肝機能異常、発疹、関節痛、発熱各2例(0.8%)などでした。
なお、本剤と同一の機序を有する他剤において、進行性多巣性白質脳症(PML)の発現が報告されています。発現リスクを低減するため、投与期間は6ヵ月までとし、6ヵ月以内に寛解に至った場合はその時点で投与を終了します。本剤による治療を再度行う場合は、投与終了から8週間以上の間隔を空けます。
中等症の潰瘍性大腸炎の患者さんの、活動期の炎症を抑える寛解導入療法に用いる
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1. 重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類C)を有する患者には、カロテグラストメチル及び活性代謝物であるカロテグラストの血中濃度の上昇が認められているため、禁忌です。
【患者さんへの指導例】
1.本剤は、過剰な免疫反応を抑えて腸管の炎症を抑えることで、潰瘍性大腸炎の症状を改善します。
2.感染症にかかりやすくなったり悪化したりする場合があります。発熱、寒気、体がだるいなどの症状が現れた場合はご連絡ください。
3.痙攣、意識の低下、意識の消失、しゃべりにくい、物忘れをする、手足の麻痺などの症状が現れた場合はご連絡ください。

【ここがポイント!】
潰瘍性大腸炎は慢性の炎症性疾患であり、炎症が生じて症状が現れる「活動期」と症状が治まっている「寛解期」を繰り返すため、長期に渡る薬物療法が必要です。活動期の寛解導入治療として、軽症~中等症では経口5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤が第1選択薬として広く使用されていて、効果不十分の場合は局所製剤(坐剤、注腸剤)の併用や経口ステロイド薬が用いられます。難治例では血球成分除去療法や免疫抑制薬、抗体製剤(抗TNFα抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤、抗IL-12/23p40抗体製剤など)、あるいはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬などが選択されます。
本剤は、世界初の経口投与可能なα4インテグリン阻害薬であり、α4β1インテグリン、α4β7インテグリンの双方に作用し、大腸粘膜の病変部位に認められる炎症性細胞の過度な集積・浸潤を抑制することで、潰瘍性大腸炎の症状を抑えます。5-ASA製剤による適切な治療を行っても疾患に起因する明らかな臨床症状が残る中等症の患者に投与されます。活動期の炎症を抑える寛解導入療法に用いられる薬剤であり、再燃を防ぐ維持療法としては使用できないことに注意が必要です。なお、本剤と他の免疫抑制薬の併用について臨床試験は実施されていないので併用を避ける必要があります。
既存のインテグリン阻害薬としては、中等症~重症患者に使用される抗α4β7インテグリン抗体製剤のベドリズマブ点滴静注用(商品名:エンタイビオ)があります。点滴を受けることが負担となっている患者にとって、本剤は大きなメリットがあると考えられます。
服薬指導では、本剤はリンパ球の遊走を阻害するため、感染症に対する免疫能に影響を及ぼす可能性があるので、感染症の兆候が現れたらすぐに連絡するように伝えましょう。1回8錠を1日3回、つまり1日24錠を服用しなければならないので、アドヒアランス低下にも注意が必要です。
重度の肝機能障害(Child-Pugh 分類C)には禁忌
8. 製造販売元など
製造販売元:EAファーマ株式会社
販売元:キッセイ薬品工業株式会社
お問合せ先:EA ファーマ株式会社 くすり相談室 0120-917-719
      キッセイ薬品工業株式会社 くすり相談センター 0120-007-622
(文責 下平秀夫) 2022年12月