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2022年6月製造販売承認

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■ジェセリ錠40mg■エパデールEMカプセル2g■ジェコビデン筋注
■ エパデールEMカプセル2g
「エパデールEM」は高脂血症に適応を持つ、EPA製剤です。本剤は、乳化剤を添加することでエマルジョン(EM:乳濁液)を作って、消化管吸収を向上させています。
1. 承認概要
新剤型 2022年6月 / 2022年9月 発売
2. 薬効分類名
EPA製剤
3. 一般的名称
イコサペント酸エチル
4. 適応症
高脂血症
5. 類薬との比較

従来の「エパデール」は1日2~3回服用する製剤でしたが、本剤は1日1回服用で、これはロトリガと同様です。適応は「高脂血症」のみです。
6. 特徴
【特徴】
本剤は、既存のエパデールカプセルおよびエパデールS(以下、既存薬)の消化管吸収を高めて1日1回投与にした薬剤であり、トリグリセリド(TG)高値を示す脂質異常症患者の新たな選択肢として期待されています。

【承認状況】
海外では承認されていません(2022年6月現在)。

【作用機序】
本剤は、n-3 系多価不飽和脂肪酸の一種であるイコサペント酸( EPA) のエチルエステル体(EPA-E)であり、小腸で脱エチル化を受けて EPA に代謝されます。EPA は血清リポたん白の代謝促進作用および肝ミクロソームにおける脂質の生合成・分泌の抑制作用を示すことにより、血清総コレステロール、血清トリグリセリドを低下させます。

【用法・用量】
イコサペント酸エチルとして、通常、成人には1回2gを1日1回、食直後に経口投与します。TG高値の程度により、1回4gを1日1回まで増量することができます。
本剤は抗血小板作用を有するため、抗凝固薬や血小板凝集を抑制する薬剤との併用により、相加的に出血傾向が増大するため注意が必要です。

【副作用】
国内第III相試験において、副作用の発現頻度は本剤2g/日群で9.8%(6/61例)、本剤4g/日群で8.2%(5/61例)でした。2%以上に認められた副作用は、本剤2g/日群で下痢3.3%(2/61例)、本剤4g/日群で軟便3.3%(2/61例)でした。
重大な副作用として、肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)が設定されています。
既存薬に比べて食事の影響を受けにくい製剤ですが、食直後の服用でより吸収が高まるため、食直後服用となっています。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.出血している患者(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血等)には、止血が困難となるおそれがあるため禁忌です。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、肝臓における過剰な中性脂肪の合成を抑制するとともに、余分な中性脂肪の代謝を促進することで、脂質異常症を改善します。脂質異常を改善することで、動脈硬化性疾患の進行を抑えることが期待できます。
2.血が止まりにくくなることがあるので、手術や抜歯の予定がある場合は事前に相談してください。
3.空腹時の服用では薬剤の吸収が低下するため、食後すぐに服用してください。
4.軟カプセルの中には魚の臭いがする油状の成分が入っているため、噛まずに服用してください。
5.脂質異常症の治療の基本は、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善です。本剤の服用中も継続して行うことが大切です。

【ここがポイント!】
本剤は、既存のEPA製剤であるエパデールカプセル、および小型軟カプセルのエパデールSに比べ、乳化剤を添加することによりを消化管で吸収されやすくした高純度改良版です。既存薬は1日2回または3回の服用が必要ですが、本剤は1日1回の単回投与です。エパデールSと同様にアルミスティック包装となっています。
既存薬からの切り替えの場合、既存薬1.8g(エパデールS900を1日2回)が、本剤2g 1日1回に相当するように開発されています。エパデールEMカプセル2gの薬価は113.00円、エパデールS900の薬価は62.7円/包(2包で125.4円)、エパデールS600の薬価は46.5円/包(3包で139.5円)ですので、1日薬価の負担は本剤のほうが少なくなっています。なお、本剤の粒子径(約6mm)は、既存薬のエパデールS(約4mm)と比較してやや大きくなっています。
EPAの成分は脂肪酸であり、胆汁の主成分である胆汁酸がないと吸収が低下しますが、本剤は体内で製剤中の脂質成分が界面活性剤と自己乳化することで吸収性が向上し、1日1回投与が可能になりました。本剤は既存薬に比べて食事の影響を受けにくい製剤ですが、食直後の服用でより吸収が高まるため、本剤も食直後の服用となっています。
生活習慣病患者はしばしばアドヒアランスの不良が問題となりますが、本剤は1日1回の単回投与であるため、アドヒアランスの向上が期待できます。とくに併用される機会の多いHMG-CoA還元酵素阻害薬の主な用法が1日1回であることからも本剤のニーズは高いと考えられ、TG高値を示す脂質異常症患者の選択肢を増やす薬剤として意義があるでしょう。
脂質異常症の治療の基本は、食事・運動・禁煙などの生活習慣の改善です。
8. 製造販売元など
製造販売元:持田製薬株式会社
お問合せ先:持田製薬株式会社 くすり相談窓口 0120-189-522

更新 2023.05.04 イラスト部に説明追加
(文責 下平秀夫) 2022年9月/2023年5月更新