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2022年12月製造販売承認

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■ラジカット内用懸濁液2.1%■アドトラーザ皮下注150mgシリンジ■アリドネパッチ27.5mg,同パッチ55…
■ ラジカット内用懸濁液2.1%
「ラジカット内用懸濁液」適応は、ALSにおける機能障害の進行抑制
1. 承認概要
新投与経路 2022年12月 / 2023年4月 発売
2. 薬効分類名
フリーラジカルスカベンジャー
3. 一般的名称
エダラボン懸濁液
4. 適応症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)における機能障害の進行抑制
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、これまで点滴静注薬しかなかったエダラボン製剤の内服薬であり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の通院・入院負担が軽減することで、在宅移行の支援となることが期待されています。

【承認状況】
本剤は、脳梗塞急性期(AIS)に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害の改善を適応症として、2001 年 4 月にラジカット注 30mg、2010 年 1 月にラジカット点滴静注バッグ 30mg の製造販売承認を取得しました。その後、製造販売承認事項一部変更申請により、2015 年6月には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の点滴静注治療薬として承認されました。現在では日本のみならず、海外においても製造販売承認を取得しています。

【作用機序】
ALSの発症及び病勢進展は原因不明ですが、フリーラジカルによる酸化ストレスが関与している可能性が示唆されています。本剤は、フリーラジカルを消去し、運動神経細胞等の酸化的傷害を抑制することで病勢進展の遅延を示します。

【用法・用量】
通常、成人に1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に1日1回経口投与します。
通常、本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、これを繰り返します。第1クールは14日間連日投与する投与期の後14日間休薬し、第2クール以降は14日間のうち10日間投与する投与期の後14日間休薬します。

【副作用】
国際多施設共同第III相試験(MT-1186-A01試験)において、日本人に認められた臨床検査値異常を含む副作用の発現は65例中3例(4.6%)でした。内訳は、下痢1例(1.5%)、肝機能異常1例(1.5%)、倦怠感1例(1.5%)でした。
なお、重大な副作用として、急性腎障害、ネフローゼ症候群、劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、血小板減少、顆粒球減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性肺障害、横紋筋融解症、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)が設定されています。
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.ALSの進展に伴う筋萎縮により血清クレアチニン値が低下する可能性があるため、血清クレアチニン値は一時点でなく、推移を確認する必要があります。
2.筋萎縮のある患者さんの腎機能評価では、血清クレアチニン値・BUN値の測定に加えて、血清シスタチンCによる推定糸球体ろ過量の算出や、蓄尿によるクレアチニンクリアランスの算出等、筋肉量による影響を受けにくい評価を実施する必要があります。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、運動神経細胞などの酸化による傷害を防ぐことで、ALSによる機能障害の進行を抑えます。
2.抗菌薬を服用することになった場合は、主治医に連絡してください。
3.頭痛やめまい、吐き気、口や喉の渇き、肌の乾燥などが現れた場合は脱水症状の可能性があります。脱水があると腎機能障害が起こりやすくなるため、主治医に相談してください。

【ここがポイント!】
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)は、運動神経が選択的に変性・脱落し、四肢、顔、呼吸筋などの全身の筋力低下と筋萎縮が進行的に起こる原因不明の神経変性疾患で、発病率は10万人に2人程度といわれています。
これまで、エダラボン製剤の点滴静注薬(商品名:ラジカット注30mg、ラジカット点滴静注バッグ30mg)が脳梗塞急性期およびALSの治療薬として承認されています。点滴静注薬では、ALS進行による筋萎縮に伴い血管の確保が難しくなるとともに、注射による痛みや通院・入院などの治療負担が課題でした。
本剤は投与が容易で、より利便性の高いエダラボンの経口薬であるため、これらの負担軽減が期待されています(現時点での適応はALSのみ)。本剤は、既存のエダラボン静注薬とエダラボン未変化体のAUC0-∞が生物学的同等性の基準を満たしていることにより、静注薬と同等程度の有効性と考えられています。なお、ALSに使用される既存の経口薬としては、グルタミン酸遊離阻害薬のリルゾール(同:リルテック錠50mgほか)があります。
ALS患者は嚥下困難を伴うことが多いため、誤嚥リスクを考慮して、本剤はとろみを持たせた製剤となっています。使用前にボトルを振ってボトルの底に固着物の付着がないことを確認してから、専用の経口投与用シリンジで薬剤を量り取ってから直接投与します。なお、経鼻胃管または胃瘻チューブを用いて経管投与することもできます。
本剤は食事の影響により血漿中濃度が低下するため、起床時など8時間絶食後に服用し、服用後少なくとも1時間は水以外の飲食は避けます。ボトル開封前は冷蔵(2~8℃)で保存し、開封後は密栓して室温で保存し、ボトル開封後15日以内に使用します。
ALSは長期にわたる継続的な治療が必要であることから、エダラボンの経口薬の登場は、患者、介護者および医療者にとって朗報であり、エダラボン製剤が必要な患者の在宅治療移行が増えることが期待されます。
ついにエダラボン製剤の内服薬が登場!!
8. 製造販売元など
製造販売元:田辺三菱製薬株式会社
お問合せ先:田辺三菱製薬株式会社 くすり相談センター
      0120-753-280
(文責 下平秀夫) 2023年6月