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2021年6月製造販売承認

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■ベリキューボ錠2.5mg,5mg,10m…■アイモビーグ皮下注70mgペン■ツイミーグ錠500mg
■ ベリキューボ錠2.5mg,5mg,10mg
ベリキューボ錠2.5mg,5mg,10mg
1. 承認概要
新有効成分 2021年6月 / 2021年9月 発売
2. 薬効分類名
慢性心不全治療剤/可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤
3. 一般的名称
ベルイシグアト
4. 適応症
慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
5. 類薬との比較

6. 特徴
【特徴】
本剤は、標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に対して、新しい作用機序で心血管イベントリスクを低減させることが期待されています。

【作用機序】
慢性心不全の病態では、内皮細胞機能不全による一酸化窒素(NO)産生の低下やsGCの機能不全により、cGMPシグナルの低下が引き起こり、その結果として心筋および血管の機能不全の一因、さらには心不全の悪化に寄与していると考えられます。本剤は、NO受容体であるsGCを直接刺激する作用と、内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用の2つの機序により、心血管系の重要なシグナル伝達経路であるNO-sGC-cGMP経路を活性化して、慢性心不全の進行を抑制します。

【用法・用量】
通常、成人にはベルイシグアトとして、1回2.5mgを1日1回食後経口投与から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量します。なお、血圧など患者の状態に応じて適宜減量します。

【副作用】
国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)において、副作用は本剤投与群2,519例中367例(14.6%)で報告されました。主な副作用は、低血圧172例(6.8%)、浮動性めまい37例(1.5%)、悪心19例(0.8%)、起立性低血圧、消化不良各14例(0.6%)、疲労11例(0.4%)、頭痛10例(0.4%)などでした。
なお、重大な副作用として、低血圧(7.4%)が設定されています。
標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者に
7. 使用上の注意と服薬支援
【薬剤師への注意】
1.本剤は血管を拡張し血圧を低下させる作用を有しており、症候性低血圧があらわれるおそれがあります。低血圧の既往のある患者や、降圧剤、利尿剤、硝酸剤等の降圧作用を有する薬剤を投与中の患者等には注意が必要です。
2.可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬(リオシグアト)を投与中の患者さんには、症候性低血圧を起こすおそれがあるため禁忌です。また、シルデナフィル等のPDE5阻害薬、硝酸イソソルビド等の硝酸薬及びNO供与剤との併用はcGMP濃度の上昇によって降圧作用が増強することがあるため、併用注意となっています。

【患者さんへの指導例】
1.この薬は、心臓や血管の機能を調節し、慢性心不全が悪くなるのを抑えます。
2.血管を拡張させる作用によって、めまい、ふらつきが現れることがあります。高い所での作業、自動車の運転や機械の操作には注意してください。
3.(女性に対して)本剤を服用中、および服用終了後一定期間は確実な方法で避妊してください。妊娠を希望する場合は医師に伝え、今後の方針について相談してください。

【ここがポイント!】
本剤は、慢性心不全の適応で承認された初の可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬です。既存のsGC刺激薬としてはリオシグアト(商品名:アデムパス)が肺動脈性肺高血圧症などの適応で承認されています。
日本人を含む国際共同第III相試験(VICTORIA、試験16493)では、慢性心不全の標準的な治療を受けているHFrEF患者に対して本剤またはプラセボが投与されました。前治療として、β遮断薬、ACE阻害薬またはARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤併用療法を受けていた患者が59.7%を占めていました。その結果、本剤群では、心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発現の相対リスクが10%減少しました(ハザード比[HR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.82~0.98)。
本剤と既存のsGC刺激薬であるリオシグアトは、降圧作用を増強する恐れがあるため併用禁忌であり、シルデナフィルを含むPDE5阻害薬、一硝酸イソソルビドなどの硝酸剤およびNO供与剤も同様の理由から併用注意となっています。なお、本剤投与前の収縮期血圧が100mmHg未満の患者では過度の血圧低下が起こる恐れがあるため血圧の確認も必要です。
近年、HFrEFに対する新しい治療薬として、HCNチャネル阻害薬のイバブラジン(商品名:コララン)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のサクビトリルバルサルタン(同:エンレスト)、SGLT2阻害薬のダパグリフロジン(同:フォシーガ)などが使用できるようになりました。本剤は既存の治療薬とは異なる作用機序であり、標準治療が効果不十分な患者であっても心血管イベントリスクが低減する可能性があります。

最近の心不全の薬物療法についてつぶやいてみました。2023.09
8. 製造販売元など
更新: 2023-09 製剤写真、イラスト、心不全ブログへのリンクを加筆

製造販売元:バイエル薬品株式会社
お問合せ先:バイエル薬品株式会社・コンタクトセンター 0120-106-398
(文責 下平秀夫) 2021年12月/2023年9月更新