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2023年3月製造販売承認

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■ゴービック水性懸濁注シリンジ■エムパベリ皮下注1080mg■アポハイドローション20%■リネイルゲル10%■ウゴービ皮下注0.25mg,0.5mg,…
■ エムパベリ皮下注1080mg
1. 承認概要
新有効成分 2023年3月 / 2023年9月 発売
2. 薬効分類名
補体(C3)阻害薬
3. 一般的名称
ペグセタコプラン皮下注製剤
4. 適応症
発作性夜間ヘモグロビン尿症
5. 類薬との比較

6. 特徴
<特徴>
本剤は、溶血性貧血の一種であり、指定難病の「発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)」に対する世界初のC3阻害薬です。既に補体(C5)阻害薬で治療されているにもかかわらず効果不十分な場合に、血管内溶血とともに血管外溶血を抑えることを目的に使用されます。在宅自己注射も可能です。

<承認状況>
海外では 2021年 5月に米国において初めて承認されて以降、6の国と地域で承認されています(2022年12月現在)。

<作用機序>
ペグセタコプランは、補体C3タンパク質及びC3bに高親和性で結合し、C3の開裂、補体活性化の下流エフェクターの生成及び膜侵襲複合体(MAC)生成を阻害します。その結果、発作性夜間ヘモグロビン尿症患者における血管外溶血及び血管内溶血を抑制します。

<用法・用量>
通常、成人には、ペグセタコプランとして1回1080mgを週2回皮下投与します。なお、十分な効果が得られない場合には、1回1080mgを3日に1回の間隔で皮下投与することができます。
補体(C5)阻害薬から本剤に切り替える際は、補体(C5)阻害薬中止による溶血を抑えるため、本剤投与開始後4週間は補体(C5)阻害薬を併用します。

<副作用>
国際共同第III相試験(PEGASUS/APL2-302試験)の無作為化投与期間において多く認められた副作用は、注射部位紅斑14.6%、注射部位反応9.8%、注射部位硬結7.3%、注射部位腫脹7.3%などでした。
なお、重大な副作用として、莢膜形成細菌による重篤な感染症(頻度不明)、髄膜炎菌感染症(頻度不明)、過敏症(2.5%)が設定されています。
7. 使用上の注意と服薬支援
<薬剤師への注意>
1.髄膜炎菌等による感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意してください。
2.シリンジポンプを用いて、約15~60分かけて注入します。【自己投与マニュアル】等を利用して説明してください。
https://www.empaveli-patient.jp/img/method/self-administration-manual-cronopumps.pdf

<患者さんへの指導例>
1.この薬は、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対して補体(C5)阻害薬による適切な治療を受けているにもかかわらず、効果が不十分な場合に投与される注射薬です。
2.血管内の溶血を防ぐとともに、血管外の溶血も防ぎます。
3.投与中および投与終了後2ヵ月は、「患者安全性カード」を常に携帯してください。
4.投与中に発熱や悪寒、頭痛など感染症を疑う症状が生じた場合は、たとえ軽度であっても主治医に連絡してください。

<ここがポイント!>
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は溶血性貧血の一種であり、免疫機構の1つである補体によって赤血球が攻撃、破壊される病気です。現在のところ根本的な治療は造血幹細胞移植のみですが、補体(C5)阻害薬であるエクリズマブ(製品名:ソリリス点滴静注)やラブリズマブ(製品名:ユルトミリス点滴静注)による治療を続けることで症状の進行を抑えることができます。しかし、補体(C5)阻害薬は効果が不十分となることがあり、C5経路の阻害によって代償的にC3b、C3経路が活性化されることが血管外溶血につながります。
本剤は、補体C3とC3bを特異的に阻害し、血管内溶血を防ぐとともにC5阻害薬で活性化されたC3bの血管外溶血も抑制することができます。
【臨床成績】
エクリズマブ治療でHb値が10.5g/dL未満のPNH患者に対して、本剤を投与したときの有効性および安全性をエクリズマブ継続投与と比較した国際共同第III相試験(PEGASUS/APL2-302試験)において、主要評価項目である無作為化投与期間の16週時点のHb値のベースラインからの変化量は、本剤群は+2.37g/dL、エクリズマブ群は-1.47g/dL、群間差は3.84g/dL(95%信頼区間:2.33~5.34)であり、本剤はエクリズマブ群に比べてHb値を有意に改善しました。
【事前のワクチン接種が必要】
本剤は免疫系の一部を阻害するため、髄膜炎菌や肺炎球菌、インフルエンザ菌b型などによる重篤な感染症にかかる可能性が高まります。そのため、本剤を初めて使用する2週間前までに、これら3種のワクチンを接種する必要があります。なお、重篤な感染症を引き起こすリスクは投与終了後も数週間続くことがあるので、患者安全性カードを患者に携帯する必要があります。
8. 製造販売元など
製造販売元:Swedish Orphan Biovitrum Japan 株式会社
発売元:旭化成ファーマ株式会社
お問合せ先:旭化成ファーマ株式会社 くすり相談窓口 0120-114-936
(文責 下平秀夫) 2023年12月